基礎講座|滅菌・殺菌 3. 塩素消費

次亜塩素酸ナトリウムを水に注入していくと残留塩素も増えていきます。
ここで、塩素は強カな酸化剤でもあることから、細菌などを不活化するだけでなく無機物・有機物を問わず酸化できるものはすべて酸化し、自らも分解されます。
また水中にアンモニア成分が含まれていると遊離残留塩素ではなく、クロラミンなどの結合塩素となります。

水質と遊離残留塩素・結合塩素

塩素の注入量と残留塩素の種類および濃度の関係は水質(含有成分)によって、図のI・II・IIIのようなカーブを描きます。

清浄な水(I)では注入量に比例して遊離残留塩素が増加します。塩素を消費する成分(鉄分などの酸化可能なもの)を含む場合(II:ただしアンモニア成分なし)では、最初には遊離残留塩素は生じませんが、ある程度注入していくと遊離残留塩素が現れ始めます。(a:この間、水中の成分を酸化分解しています)

アンモニア成分を含む場合(III)では、ある程度注入すると結合塩素を生じ始めます(b)。
さらに注入を続けると結合塩素はいったん極大値(c)を示し低下を始めます。(この間、結合塩素は注入した塩素で分解されていきます)
そして、極小点(d)に達するとまた注入量に比例して遊離残留塩素のみが直線的に増加します。

※この極小値(d)を不連続点またはブレークポイントといい、不連続点を少し超えた遊離残留塩素濃度に制御する浄水の殺菌方法を「不連続点(ブレークポイント)処理」といいます。

 

殺菌効果

図にも記していますが、遊離残留塩素として存在しているか結合塩素として存在しているかは水質と濃度によって異なり
ます。殺菌効果の点でいえば遊離残留塩素の濃度を管理すべきでしょう。(水道水以外のプールや浴槽の消毒には「塩素=遊離残留塩素」のみを対象としていることがほとんどです。)

  • 殺菌効果の面からは遊離残留塩素の濃度を管理する必要があります。(I)のような清浄な水では遊離残留塩素のみを生じますから、「1-1. 次亜塩素酸ナトリウムの注入量計算」及び「1-2. 次亜塩素酸ナトリウム注入量早見表」で述べた理論注入量のままでかまいません。(II)や(III)の水質では理論注入量よりも多く注入する必要があります。
  • (III)のようにアンモニア成分を含む場合の塩素注入量は、一般にアンモニア成分量の10倍(アンモニア成分が1mg/Lで
    あれば塩素が10mg/Lになるのに必要な量)注入する必要があると言われています。
  • 結合塩素の殺菌効果は遊離残留塩素の数分の一とも数十分の一ともいわれています。

塩素要求量と塩素消費量

水に塩素を注入していき、結合残留塩素を検出し始めたとき(b)の塩素注入率が塩素消費量です。これに対し遊離残留塩素が検出され始めるときの塩素注入率(図ではa,d)を塩素要求量といいます。一般には両者をあわせて「塩素消費」と呼ぶことが多いようです。

簡易な注入量の求め方