基礎講座|pH中和処理制御技術 5-1. pH制御 pH制御の概要
pH制御の概要
工場等の廃水の多くは、酸性またはアルカリ性を示しています。そして酸性廃水にはアルカリを、またアルカリ性廃水には酸を加えて中和し、pH値が排出基準内に入るように調整しなければなりません。
また、中和以外にも特定の成分を除去したり、ある成分を正確に測定したりするためにpH制御剤を使用してpH値を制御することがあります。
このような一連の作業を「pH制御」と呼びますが、こうしたpH制御を効率良く行なうためには、pH計による信頼度の高いpH測定が重要なポイントになってきます。
pH制御の行なわれる主な目的を整理してみると次のようになります。
pH制御の主な目的
排出基準に適合させる
廃水を公共水域に放流するときpH値は下記の範囲内でなければなりません。
- 海域以外の公共水域
pH5.8~8.6 - 海域
pH5.0~9.0
したがって、一般には廃水のpH値をpH制御剤を使って調整することが行なわれます。
廃水処理の容易化をはかる
廃水処理を容易化または促進する目的でpH制御が行なわれます。(例えば以下のような場合)
- (1)
- 六価クロム除去の場合
- 硫酸等でpHを2~3にしてクロムの3価還元を行ない、ついでフロック形成しやすいようにpH7.5~10前後にアルカリ化し、沈澱除去します。
- (2)
- エマルジョン破壊の場合
- エマルジョン化(乳化)した油脂を、浮上その他の物理的処理で除去するために酸を加えてエマルジョンを破壊します。
濃度計による測定の信頼性を向上させる
残留塩素計などで正確な濃度を測定するには、pHを所定の値に調整してやり、外乱条件を取り除いてやることが必要になります。
重金属類の除去
重金属の中には一定のpH範囲で水に不溶性の化合物を形成させることによって、容易に除去できるものがあります。
これらの重金属を取り除きやすくするため、pH制御を行なうことがあります。
では、まずpH制御の最も主要な目的と思われる廃水の処理について見てみましょう。
廃水とその及ぼす影響
工場廃水はその工場の生産物やプロセスの内容により、さまざまな成分を含みますが、おおよそ次のように分類できます。
酸性廃水を生じる工業
- 化学工業(ヨード、活性炭、燐酸肥料等の製造工場、メッキ工場など)
- 食品工業(発酵、デンプン、製あん工場など)
アルカリ性廃水を生じる工業
- 化学工業(アンモニア肥料、ソーダ工場、メッキ工場など)
- 石油化学工業
- 機械工業
- 食品工業(洗びん工場など)
そして、これらの廃水は下記のような種種の悪影響を及ぼします。
廃水の及ぼす影響
- (1)
公共用水域に及ぼす影響
- 飲料水、水道水源の汚濁、水産物に対する悪影響、かんがい用水の汚濁
- (2)
下水管渠その他の施設、機具の腐食
- (3)
廃水処理施設の機能破壊