基礎講座|pH中和処理制御技術 5-3. pH制御 pH制御における留意点
pH制御における留意点
新しくプラントを設計されるようなときはもちろん、既設のプラントでpH値による自動制御を行なわねばならない場合にも、出来る限り下記の条件をみたすよう検討し、制御しやすい条件を作る必要があります。
よい制御を行なうための条件
- (1)
信頼度の高いpH測定が行なわれること
- 温度補償
- スパン調整※1
- 不斉電位の補正※1
- アルカリ誤差
- 酸誤差
- ※1
標準液校正
などについて調整が行なわれているか確認してください。
- (2)
外乱が少ないこと
被制御液や制御剤の濃度・流量・温度の変動、攪拌効果の違いなど、pH制御の場合は制御上障害となる外乱が多いので、出来るだけこれらを少なくすることが大切です。
- (3)
緩衝指数がなるべく小さいところで制御すること
緩衝指数とは被制御液1Lに対して制御剤を1ミリ当量加えたときのpH値の変化です。つまり、緩衝指数が小さいほど制御剤の量に対する変化が緩やかなので制御しやすくなります。
(中和滴定曲線から予想できる。)- ※
pH値の変化は、添加される制御剤の量と直線関係を持たず、そのときどきのpHによって反応速度が異なるため、それにつれて緩衝指数の大きさが変わります。(図1(a)~(c)参照)
- ※
- (4)
むだ時間(図2)が少なくなるような制御剤の添加方法をとること
- (5)
適切な制御機器を用いること
緩衝指数の大きさに応じて、最も適した調節計を選定することが必要です。
これらのことから自動制御を計画するにあたり、適切な制御を行なうためには下記の諸項目が必要になります。
pH制御に必要な項目
- (1)
被制御液について
- 名称
- 成分
- 濃度(%):▲常用▲変動範囲
- pH値:▲常用▲変動範囲
- 温度(℃):▲常用▲変動範囲
- 圧力(kgf/cm2G):▲常用▲変動範囲
- 粘度(c.p.):▲常用▲変動範囲
- 固形物の有無と量は?
- 有機溶剤を含んでいますか?
- 液中に漏洩電流はありますか?
- (2)
制御剤について
- 名称
- 濃度(%):▲常用▲変動範囲
- pH値:▲常用▲変動範囲
- 温度(℃):▲常用▲変動範囲
- (3)
反応の種類と滴定曲線
- (4)
制御目標pH値と許容誤差
- (5)
プロセスの特性(過渡反応特性)
- ※
この特性をとるときには、自動制御を行なわない状態で次の試験を行ないます。プロセスが制御点において定常状態にあることを確かめ、次に操作量すなわち調節試薬のある値を急に増加、または減少させ、pH値が時間的にどのように変化して行くかを調べます。過渡反応特性はパイプ中の流速やタンクの容積、電極のむだ時間などすべての要素の特性を総括的に知ることができ、制御機器の設計上重要な資料です。