基礎講座|精密ポンプ技術 8-3. ガスロックの解消 ポンプヘッド内部の気泡を除去する

ポンプヘッド内部の気泡を除去する

一度ガスロックしてしまうと容易なことではなかなか解消されません。前項「9-2. ガスロックの解消 ポンプヘッドの内圧を吐出圧力よりも大きくする」の(1)の操作が事情によって行うことができない現場も時折見られます。この場合、ポンプヘッド部にエア抜き弁を設け、強制的に気泡を抜くという方法をとることができます。

この方法は、比較的圧縮比の小さい小型ダイヤフラムポンプに採用されています。
また、ガスロックの防止法として、「ポンプに入ってきたガスをいかに抜くか」という考え方の他に、「ガスをいかにポンプにいれないか」という考え方があります。

これには、次の3つの観点があります。

  • a)

    吸込側のホースから空気を取り込まない。
    ガスロックの原因としてよく見られるのが、タンクの液がなくなってしまっているにもかかわらずポンプが作動している状態、つまり空運転です。
    この状態になるとポンプは確実に空気を吸い込み、ガスロックが発生しやすくなります。

    この場合は、右図のように液面レベルを監視するセンサーを設置して、液が残り少なくなると警報を発したり、液を補充するようなシステムを設計すると良いでしょう。

  • b)
    ポンプヘッドに混入してきた気泡を速やかに排出する。
    a)のような空運転の場合を除いて、少量の気泡が間欠的あるいは連続的に入ってくるのが普通です。このことを考慮して、入ってきた気泡が速やかに排出されるようなポンプヘッド内の流路設計、つまり、気泡がガスロックを起こすほどには蓄積されない構造にすることです。
    しかし、前にも述べましたが、ストローク長を短くすると、圧縮比が相対的に低下するために気泡が蓄積し、ガスロックが発生しやすい条件になることがあります。
  •  
  • c)
    ガスを発生させやすい液を取り扱う場合は、その液の性質を充分調査し、ガスを発生させないための対策を立てておく。
    次亜塩素酸ナトリウムなどは非常にガスを発生させやすい液体です。このような液を移送する際には、その液の性質を充分調査し、できるだけガスを発生させないような理想的条件で送液する必要があります。

以上のように、ポンプヘッド内に入り込んだ空気(ガス)はガスロックを引き起こすことがあります。

薬液タンクの液面が低下するとガスロックを起こすことがある

気泡が、ガスロックを起こさない程度の少量であっても無視することはできません。それは、はじめのうちは気泡が小さくても薬液タンクの液面が低下するとガスロックを起こすことがあるからです。

 

 

(図1)の(1)のようにタンクの液面レベルが高いと、ポンプヘッド内の気泡は液の重さ(圧力)に押されて小さくなっています。(図1)の(2)のようにタンクの液面レベルが低くなると、液の圧力が小さくなり、ポンプヘッド内の気泡は大きくなります。ここまでくると、ポンプヘッド内部の気泡は、ガスロックを引き起こすのに充分な大きさになる恐れがあります。

つまり、タンクが液でいっぱいに満たされているときは、たとえポンプヘッド内にガスが混入していてもガスロックを起こすとは限りませんが、液面レベルが低下するとガスロックを引き起こすほどにまで気泡が大きくなることがある、ということです。
さらに悪いことにポンプヘッド内部の気泡は、ポンプの吐出量にも影響を与えます。

結論として、ポンプヘッド内部に気泡が含まれると、薬液タンクの液面変動によって吐出量が変化する。具体的に言えば、液面レベルが低下すると吐出量が減少するということがいえます。

気泡と吐出量との関係は次のようになります。(図2)

注意
(図2)の(2)の現象は、実際には吐出側が高圧の場合にのみ当てはまります。しかし、低圧の場合でも程度の違いはあるものの、気泡の圧縮によって吐出量のロスが生じることは避けられません。

さらに考えを進めると、ポンプヘッド内部の気泡が大きいほどダイヤフラムの移動量のうちで気泡を潰す割合が増え、吐出量が少なくなることがわかります。そして、これが発展するとガスロックにつながるのです。
先に薬液タンクの液面レベルが低下すると、ポンプヘッド内の気泡が大きくなることを述べましたが、これは液面レベルが低下するにつれて吐出量が減少することに他なりません。
本来ダイヤフラムポンプは、吸込側タンクの液面レベルの変動による吐出量の変化があってはならないものなのですが、ポンプヘッド内に気泡が混入すれば、実際に吐出量が変化することも有り得るのです。

 

ここでガスロックについての重要点をまとめておきましょう。

  • (1)
    吐出側の圧力が高ければ高いほどガスロックが起こりやすい。
  • (2)
    大容量(数百mL/min以上)のポンプではガスロックは発生しにくい。
  • (3)
    小容量(特に数十mL/min以下)のポンプでは、大容量のポンプと比較してガスロックが発生しやすい。
  • (4)
    ストローク長を短くすればするほどガスロックが発生しやすくなる。
  • (5)
    気泡が一度に大量に入ってくるとガスロックが発生しやすい。
  • (6)
    気泡が少しずつしか入ってこない場合はガスロックは発生しにくい。

ガスロックについては、注目テーマ(その他)「ガスロックとは」でも取り上げています。ガスロックを防止するタクミナの次亜塩素酸ナトリウム注入専用ポンプの動画<エアを排出する実映像>もアップしていますので、あわせてご覧ください。

 

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