基礎講座|精密ポンプ技術 9-1. 粘度とは?

流体、たとえば水、油、空気などは、文字通り流れる物質です。言い替えれば、高いところから低いところへ形を自由に変えながら自然に移って行く性質を持つものです。また「水は方円の器に従う」といわれるように、流体には一定の形がありません。速いか遅いかの違いこそあれ、あらゆる形状に変化します。
次に、洗面器に水を入れてぐるぐるかき回したことを思い浮かべてください。しばらく水は回り続けていますが、次第に回転が遅くなり、ついには止まってしまいます。ここで水の代わりに油を使えばどうなるでしょうか。水と比べて、はるかに短い時間で止まるはずです。マヨネーズにいたっては回転させることさえ不可能でしょう。
以上のように、形状変化の速さや回転が止まるまでの時間の違いを引き起こす性質を粘性と呼び、この大きさを表わす値を粘度といいます。したがって粘度とは、「流れやすさを表わす値」と言うことができます。

粘度の単位

粘度という概念がある以上、数値で定量的に表す必要があります。そこで粘性による力の関係を表すのが「粘性に関するニュートンの法則」です。
簡単に言えば、粘度が大きい流体ほど粘性による力が強い、というごく当り前のことを示しており、粘度計はこの法則をもとに作られています。しかし、自然界にはやはり法則に従わない流体があるもので、この法則に従う流体を「ニュートン流体」、従わないものを「非ニュートン流体」と呼んでいます。非ニュートン流体には、ペイントなど比較的高粘度の液体が多く含まれます。
粘度μ(ミュー)の単位はPa・s(パスカル秒)で表されます。

CGS単位系のP(ポアズ)、CP(センチポアズ)との関係は

1P = 0.1Pa・s

1CP = 0.01P = 0.001Pa・s = 1mPa・s

となります。

定量ポンプ業界では普通mPa・sが用いられます。ただし高粘度液ではPa・sの値が使われることがありますので、圧力損失などを計算する際には注意が必要です。

動粘度

配管の圧力損失を計算する際に必要となる粘度量です。粘度μの値を密度(比重量)ρ(ロー)で割ったもので、普通これをν(ニュー)で表します。このνを動粘度と呼び、

単位の説明
ν:動粘度[m2/s 平方メートル毎秒]
μ:粘度[mPa・s ミリパスカル秒] 1mPa・s = 10-3Pa・s
ρ:密度[kg/m3 キログラム毎立方メートル]

CGS単位系のSt(ストークス)、cSt(センチストークス)との関係は

1St = 0.0001m2/s

1cSt = 0.01St = 0.000001m2/s

となります。

粘度の測定

一般に回転法によって粘度を測定します。これは円筒または円盤を流体中で回転させてトルクを測定し、粘度に換算するという方法です。
ブルックフィールド回転粘度計(たとえば東京計器、B型粘度計)がその一例です。図のように試料中にいれた円筒をモータで回転させると、目盛り盤はモータと共に回転します。ここで円筒にはスプリングを介して回転が伝わるため、粘度による力に相当する角度分だけ目盛り盤の回転より遅れて円筒が回ります。この遅れ角は、流体の粘性力に比例しますので、角度を測定することによって粘度が求められる訳です。

レイノルズ数

細管内の流れには、管軸に平行状である場合(層流)と乱れる場合(乱流)とがあります。一般に流速が遅い場合は層流で、速くなると乱流になりますが、流速ばかりでなく管内径や流体の密度、粘度にも関係することが知られています。そしてこの関係を次式のように導いたのがレイノルズという学者です。

単位の説明
Re:レイノルズ数[無次元…単位なし]
v:管内流速[m/s]
d:管内径[m]

上式で計算されたReの値が約2000(正しくは2320)よりも小さければ層流で、大きければ乱流になります。
このようにレイノルズ数を用いると、層流か乱流かの区別ができるので便利です。(2000ちょうどの場合は層流と考えてください。)

特殊な粘度の単位

簡単に粘度を測定できるという理由から、工場の現場では特殊な粘度計が用いられています。セイボルト粘度計、レッドウッド粘度計、エングラー粘度計などで、次のような測定方法を採っています。

試料を一定の高さまで規定の容器にとる。

容器底部の短い細管またはオリフイス(細孔)を通して試料を流下させる。

全量(一定量)が流出するのに要する時間、
またはフラスコ内に一定体積の試料が流入するのに要する時間を測定して粘度を求める。

単位として、セイボルトおよびレッドウッドは「秒」、エングラーは「度」で表します。次にこれらの粘度と動粘度との関係を示します。

セイボルト秒(ssu)= 4.55 × 10-6m2/s

レッドウッド秒 = 4.05 × 10-6m2/s

エングラー度 = 0.132 × 10-6m2/s