基礎講座|精密ポンプ技術 9-2. 粘度に影響を与える要因

温度

流体の粘度は、特に温度による影響を強く受けます。一般に気体は温度が上昇するにつれて、また液体は温度が低下するにつれて粘度を増します。
下表は、空気と水の各温度における粘度を示しています。

温度(℃) 空気の粘度(mPa・s) 水の粘度(mPa・s)
0 0.017 1.8
20 0.018 1.0
100 0.023 0.28

流体(液体)の濃度

高分子凝集剤やグリセリンなどは、濃度によって著しく粘度が異なります。高分子凝集剤には、濃度にしてわずか1%の違いが500~1000mPa・sもの差を生じさせるものがあります。

チクソトロピー流体とレオペクシー流体

流体には攪拌しているうちに見かけの粘度が小さくなっていくものがあります。このような流体の性質をチクソトロピーといい、この性質を示す流体をチクソトロピー流体と呼びます。
また反対に、攪拌しているうちに見かけの粘度が大きくなって行くものもごく少数ですが存在します。この性質をレオペクシーといい、この性質を示す流体をレオペクシー流体と呼びます。

圧力

液体の粘度は圧力が増大するとともに大きくなります。しかし大気圧付近では、1気圧だけ圧力が増加することによる粘度の変化率は0.1~0.3%程度ですので、無視しても差し支えありません。
以上のように、粘度は種々の要因によって影響されますので、粘度測定に当たっては温度などを一定にしておくことが必要です。また特に非ニュートン流体では、粘度計の種類や測定方法によって粘度の値が大きく異なることがあります。普通は、たとえば「T社の粘度計を使用し、ローターNo.1でローター回転数が10rpmのときの粘度」のように記録します。

高粘度液による摩擦抵抗

高粘度液を配管中に通すと管壁と液体との間に摩擦による力が働きます。つまり液体を配管の外に押し出すためには、この摩擦力以上の力を加えなければならないということです。このときの摩擦による力を摩擦抵抗といいます。また、力を面積で割ったものが圧力で、摩擦抵抗が大きいほどポンプにかかる圧力が高くなります。
摩擦抵抗は液体の粘度が高いほど、また配管が細くしかも長いほど大きくなります。条件によってはポンプを破損させるほどに大きな値になることがありますので、この値を事前にチェックしておくことが重要になります。
更に往復動ポンプでは、摩擦抵抗の他に脈動に伴う慣性抵抗が働きます。しかし500mPa・s以上の高粘度液では、慣性抵抗に比べて摩擦抵抗がはるかに大きくなり、しかもそれぞれの最高値を示す時間がずれていますので、慣性抵抗の検討は省略できます。

往復動ポンプの慣性抵抗

往復動ポンプは毎ストローク時に液の吸入・吐出を繰り返すので、配管中の液の流れは脈動となります。つまり配管内で液が動いては止まる動作を繰り返すわけです。そして配管が長くなると、配管中の液が一斉に動き、また全体が同時に止まらなければなりません。このとき働く慣性力に抵抗するために大きな力が必要になります。
この力(慣性抵抗)は摩擦抵抗と同様に、配管が細くしかも長いほど大きくなります。慣性抵抗が大きいほどポンプにかかる圧力が高くなるのも同じです。
また慣性抵抗の値は、吸入と吐出工程の始めに最大値を示し、摩擦抵抗が最高値を示す位置(工程の中間値)と時間はずれています。