基礎講座|pH中和処理制御技術 6-3. 中和滴定曲線

中和滴定曲線

前項の「6-2. pH制御に必要な中和剤理論量の計算例」の理論注入量はあくまでも概算値です。従って、厳密な意味では理論注入量ではありません。一般に実際の廃水には、妨害成分(緩衝成分)が含まれているため、所定のpH値にするには、中和剤を計算で求めた値よりも過剰に加える必要があるからです。

そこで、実際の廃水に一定濃度の中和剤を添加しながらpH値の変化を測定しグラフに表すと、次図のような曲線が得られます。このグラフはNaOHを注入するとOH-がZnやCuの水酸化物の生成に消費され、所定のpH値にするには過剰量を加える必要があることを示しています。

 

このようなグラフを中和滴定曲線といいます。予め中和滴定曲線を作成しておけば、希望pH値にするための薬剤量を速やかに読み取ることができます。

  • 注1)
    この滴定曲線は、廃水の代表的な水質のもとで作成しなければなりません。従って、廃水量や濃度の経時変化を予め把握しておくことが大切です。
  • 注2)
    薬剤を過剰に加えると、有毒ガス等を発生させる場合もありますので、注意してください。廃水中の成分をすべて調査し、緩衝作用の有無、加水分解反応の程度、反応生成物の性質等を考慮にいれて初めて理論注入量が求められるのだということを肝に銘じておいてください。
  • 注3)
    中和剤を選ぶ際には、中和後の反応生成物が環境等に与える影響も考慮しなければなりません。
    例えば、塩酸を使用した場合には、塩化物によって鉄製の反応槽や配管が錆びる可能性があります。また、セメント廃水のようにカルシウム分を含有する廃水に硫酸を用いた場合には、不溶性固形分(この場合は石膏が生成します)によって配管が詰まる恐れがあります。