注目テーマ|スムーズフローポンプ 船舶バラスト水の殺菌・中和
バラスト水とは
船(特に貨物船)は、一定重量の貨物を積載した状態で安定航行できるよう設計されているため、空荷だとさまざまな支障が生じます。
- 重心がずれ、転覆の危険が高まる
- 操縦室が高くなり、近くが見えない
- プロペラが水面近くになり、効率が悪くなる
空荷のときに安全に運行するため、“重し”代わりに積む水のことを「バラスト水」と言います。
船の種類によって異なりますが、総積載量の30~80%の水を運ぶことになります。
全世界で年間120億トンのバラスト水が移動していると言われています。
バラスト水の問題点
荷揚げ港で取り込んだバラスト水を、荷積み港で放流することにより、バラスト水に混入した生物が海域を越えて移動します。
生物が本来の生息地でない場所で繁殖すると、様々な問題が発生します。
- 生態系の破壊
- 漁業への被害
- 病原菌等の人の健康への被害
バラスト水の規制
2004年、IMO(国際海事機関)においてバラスト水管理条約が採択され、現在発効待ちの段階です(2014年3月現在)。
条約発効後は、原則として国際航路を航行するすべての船舶にバラスト水処理装置の搭載が義務付けられます。
バラスト水の処理方式
バラスト水処理装置は、水生生物を除去する方式によって以下のように分類されます。
処理の分類 | 処理方法 | 技術的手段 |
---|---|---|
物理処理 | ろ過 紫外線 熱 キャビテーション 凝集 | フィルター・膜 UVランプ 熱交換機 凝集剤添加・捕集 |
化学処理 | 薬液注入 薬剤発生装置 海水電解 オゾン注入 酸欠 | NaClO, 過酢酸 ClO2発生装置 NaClO(電解) オゾン発生装置 N2不活性ガス |
複合処理 | 物理、化学処理の複合 | 上記の組み合わせ |
出典:
岡本幸彦・片岡久「船舶用バラスト水処理装置 JFE バラストエース®」
日本マリンエンジニアリング学会誌 第46巻 第4号(2011)
スムーズフローポンプによる薬液注入
上記の処理方式のうち、薬剤注入方式の処理装置において、タクミナのスムーズフローポンプが活躍しています。
薬液注入方式では、海水を取り込む際に殺菌剤(次亜塩素酸ナトリウム)を注入し、水中の微生物を殺滅します。
排出時には還元剤(亜硫酸ナトリウム)を注入し、殺菌剤による残留塩素を中和・無害化してから排出します。
タクミナのスムーズフローポンプは以下のような特長から、こうした薬剤を注入するポンプとして採用されています。
- 脈動がない一定流で、ムラのない薬液注入が可能。
- インバーターによる注入量の細かな制御が可能。
- 配管をコンパクトに設計できるため、船内のスペースを有効に使える。
- 耐久性、メンテナンス性が高い。