ガラス電極を用いたpH測定
(図1) ガラス電極によるpH測定
薄いガラス膜を隔てて2種の溶液を接触させると、両液のpHの差lこ比例した電位差がガラス薄膜に発生します。これを利用するのがガラス電極によるpH測定です。
(図1)のように、薄いガラス膜で作られた容器Gの中にpHの判っている溶液Bを入れ、これを被検液Aの中に浸すと、ガラス膜の両側に起電力を生じます。そこで溶液A、Bに適当な電極E1、E2を浸し、その両電極間の電位差を電圧計Vで測定すれば、ガラス膜に発生した起電力、つまり溶液A、BのpHの差が判ります。
ガラス電極法の長所と短所
ガラス電極を用いたpH測定を、前に述べた各種の測定方法(3-3. pHの測定 水素電極・キンヒドロン電極・アンチモン電極を用いるもの)と比べると、次のような長所、短所があります。
長所
測定範囲が広い
この方法は、0~14pHの広い範囲にわたり実用上問題のない程度の性能をもっています。 これはキンヒドロン電極やアンチモン電極に比べ著しく広いといえます。
応答が速い
いままでのすべての方法に比べ、短時間で測定できます。特にアンチモン電極によるものでは、指示が安定するまで数分を要し、また比色法も時間のかかるものがあります。
操作が簡単で、連続測定が可能
水素電極やアンチモン電極に比べ操作が簡単であり、指示薬を用いる方法では困難な連続測定が容易にできます。
再現性がよく、個人誤差がない
指示薬やアンチモン電極を用いる方法では、測定する人が違うと、測定結果が異なるという個人差がありましたが、ガラス電極ではそれがほとんどありません。
塩誤差、タンパク誤差などの各種の誤差が少ない
他の測定方法では塩誤差、タンパク誤差などが大きく、また酸化、還元性物質があると測れないことがあります。さらに指示薬を用いる方法では、色のついた液や純水の測定は困難です。
短所
ガラス膜がこわれやすい
従来の電極に使われていたガラス電極の薄膜は厚さが0.01~0.05mm程度であったため、こわれやすく、取り扱い上注意を要しました。しかし、ガラスの材質の研究が進み、最近のものは0.2mm以上の厚みがあるので、この欠点は解消されつつあります。
電極の内部抵抗が高い
水素電極、キンヒドロン電極、アンチモン電極などの方法では電極系の電気的な内部抵抗が低いので、通常の直流電位差計などで電位差の測定が可能ですが、ガラス電極法では、ガラス膜の電気抵抗が高いので、入力抵抗の特に高いミリボルトメータを使わなければなりません。また、測定回路全体の絶縁抵抗もきわめて高くする必要があり、取り扱い上容易ではありません。しかし、ガラス材料の進歩によって、ガラス膜の抵抗も幾分かは低くなってきており、計器の方も進歩し、測定はより容易になってきています。
上述のことからあきらかなように、このガラス電極による測定は、精度が高く、測定対象の制限が少なく、しかも連続測定が可能であるなど、工業的な目的にも適合しているので、pH測定の標準的な方法とし「JIS」にも採用され、最近ではpH測定といえば「ガラス電極」と言われるほど普及しています。
当初は、測定、記録などから始まったガラス電極の応用も現在では、プロセスオートメーションの一翼をにない自動制御の検出部として多数使用されています。
次回から、このガラス電極を用いた測定に限定して話を進めていきます。