基礎講座|pH中和処理制御技術 4-3. ガラス電極 pH測定の際の注意点

pH測定の際の注意点

温度補償

単位pH当たりの起電力は温度によって変化しますので、この温度による膜起電力の変化を自動温度補償電極で補償しなければなりません。

(例)1 pH当たりの膜起電力

温度(℃) 膜起電力(mV)
   0
  25
  60
   54.19
   59.15
   66.10


スパン調整

実際のガラス電極では、単位pH当たりの起電力の値が(温度一定の場合でも)必ずしも理論と一致するとは限りません。そこで、pH4またはpH9の標準液を用いて調整することにより、理論電位勾配との差違の補正を行なう必要が生じてきます。これをスパン(SPAN)調整、JISでは感度調整と呼んでいます。

不斉電位の補正

ガラス電極の膜の内外に同じpHの液を入れた場合、理論的には膜起電力は0(mV)となるはずです。しかし、実際はガラス膜の厚さ、製造工程の熱処理、前歴などによって多少の膜起電力を生じます(真の不斉電位)。また、ガラス電極、比較電極の内部極同士の電位差も存在します。これらを一緒にして不斉電位と呼んでいます。この不斉電位をpH7の標準液を用いてpH計の指示値が7になるように調整します。これを不斉電位調整、JISでは非対称電位調整といいます。

アルカリ誤差

(図1)・(図2)のように強アルカリ性の溶液のpHを測るとき、発生起電力がpHに比例せず、直線性がくずれます。これをアルカリ誤差と呼びますが、ガラス膜の組成によってその大きさが異なるばかりでなく、被検液の中に存在する陽イオンの種類と濃度、また温度によっても著しく異なります。(ナトリウムやリチウムイオンが存在する場合は大きく、これらのイオンの濃度が増すほど、また温度が上がるほど増大する性質があります。)そのため、アルカリ誤差を表示する場合には、これらの諸条件を明記しておく必要があります。

酸誤差

(図2)は、酸の種類によって、誤差を生ずることを示したもので、縦軸はアルカリ誤差と同じように直線関係からの偏差です。H2S04、H3PO4、HClについて測定されていますが、HClのみが特に大きな誤差をもっています。この酸誤差はその大きさが、アルカリ誤差に比べて小さいので、実用上はほとんど問題になりません。

          ガラス電極電位とpHとの関係                 実際のガラス電極の起電力特性