基礎講座|pH中和処理制御技術 5-2. pH制御 pH制御剤

pH制御剤

pH制御剤には、酸性廃水を中和するためのアルカリ剤とアルカリ性廃水を中和するための酸があります。

  • 酸性廃水を中和する場合
    (例)H2SO4+2NaOH = Na2SO4 2H2O
    • H2SO4:廃水の主成分
    • 2NaOH:pH制御剤(アルカリ剤)
  • アルカリ性廃水を中和する場合
    (例)NaOH+HCl = NaCl+H2O
    • NaOH:廃水の主成分
    • HCl:pH制御剤(酸)
  • (1)
    主要pH制御剤
    (表1)はよく使用されるpH制御剤を示したものです。
  • (2)
    制御剤の選択
    制御剤にはそれぞれ特色があり、用途に応じて適切なものを選定する必要があります。下記の要素を考慮に入れて、お選びください。

(表1)主なpH制御剤

  薬品名 分子式 分子量 塩基性度 工業品純度例
アルカリ剤 カセイソーダ
炭酸ソーダ
消石灰
生石灰
炭酸カルシウム
ドロマイト
NaOH
Na2CO3
Ca(OH)2
CaO
CaCO3
CaMg(CO3)2
40
106
74
56
100
92
0.7
0.5
0.8
1.0
0.6
0.6
96%
99.5
95
98
98
-
二酸化炭素
塩素
硫酸
CO2
HCl
H2SO4
44
37
98
-
-
-
-
35
98

参考文献 日本下水道協会(1971) 下水道除害施設指針

(1)pH制御効果

中和するのに必要な薬品量は種類によって異なりますが、一定の効果をあげるために必要な薬剤量の比較値を知っておくと便利です。

アルカリ剤の塩着基性度はその一つで、一般に生石灰の中和力を1として、それと比較した中和効果度を示します。
(表1.参照)

  • 例)
    硫酸を中和する場合
    • H2SO4+CaO = CaSO4+H2O(CaO=56g)
    • H2SO4+2NaOH = Na2SO4+2H2O(2NaOH = 2×40=80g)

従って、NaOHの塩基性度は56/80=0.7となります。

(2)価格

価格は必ずしも一定していませんが、例えば、NaOHは水に対する溶解度が高いことや、反応後のスラッジ生成が少ないなど、優れた性能をもっていますが、生石灰に比べて4倍近いコストとなります。(スラッジ処理のコストと比較検討が必要です。)

(3)溶解度

溶解度の高いもの程使用には便利です。NaOH、Na2CO3などは水によく溶けますが、石灰類は溶解度が極めて低いので、スラリーとして使用しなければなりません。従って、ポンプを選定するにあたっては、洗浄ラインを設けたり、立上り配管を避けるなどの対策が必要です。(表2.参照)

(表2)アルカリ剤の水に対する溶解度(100g H2Oに対するg)

温度(℃) 0 10 20 30 40 50 60
NaOH・H2O
Na2CO3・10H2O
Na2CO3H2O
Ca(OH)2
-
7
-
0.185
103.2
12.5
-
0.176
109
21.5
-
0.165
119
38.8
50.5
0.153
129
-
48.5
0.141
145
-
-
0.128
174
-
46.4
0.116

(4)沈殿物の生成

反応後、沈殿物を生成するものは、スラッジ除去などのコストが余分にかかることになります。この点ではソーダ類はカルシウム類に比べて優れています。中和反応の結果生じる塩の溶解度は(表3)のようになります。

(表3)塩の溶解度

温度(℃) 10 20 30 40 60
CaSO4・2H2O
MgSO4・7H2O
MgSO4・6H2O
0.193
23.6
-
0.204
26.2
35.6
0.209
29
-
0.210
31.3
33.0
0.205
-
35.5

(5)反応速度

反応速度は反応槽その他の施設の規模に大きな影響を与えます。反応速度が遅いと、それだけタンク容量を大きくしたり、滞留時間を長く設定しなければなりません。(表4.参照)

(表4)アルカリ剤の反応速度例

薬品 反応時間(分) 備考
室温 60℃
NaOH
Ca(OH)2
Ca(OH)2
Na2CO3
CaMg(CO3)2
0
15
30
45
360+
0
15
30
45
360+
Causatic soda
High calcium lime
High calcium slaked lime
Soda ash
Dolomitic lime
  • 原排水はFe60g/L、SO4 200g/Lを含む。