基礎講座|精密ポンプ技術 1-1. ダイヤフラムポンプ ダイヤフラムポンプとは?

ダイヤフラムポンプの原理

まず、 あの痛い注射器を思い浮かべてください。注射器はまさにダイヤフラムポンプの基本型です。
(図1)のようにピストンを後方に引くと、液がシリンダーの中に入ってきます。
そしてピストンを押すと、シリンダー先端の注射針を通して液が排出されます。

 

注射器は液の入口と出口が同じですが、仮にこれらを別々にしたものを考えてみましょう。
(入口・出口の流路は、共に円形であるものとします)

 

(図2)の状態で、ピストンを後方に動かすと液を吸い込むでしょうか?
答はノーですね。ピストンを後方に動かしてもシリンダー上部から空気を吸い込むだけで、液は上がってきません。
そこで、(図2)のときに空気が入り込んできた位置に球状の逆止弁を置いてみます。
すると(図3)のように、もはや空気は流入せずに、シリンダー内部に負圧が発生し、今度は液が吸引されます。

次にピストンを押してみましょう。(図4)
このとき逆止弁が非常に軽ければ少しは液が排出されますが、ほとんどがもとの水槽に戻ってしまうでしょう。
逆止弁がかなり重いものであれば、全量がもとに戻ってしまいます。

 

 

そこで、シリンダー下部にも液の逆流を止める向きに逆止弁を設けます。

 

すると(図5)のように逆止弁の働きによって、シリンダー内部の液はもとには戻らず、上部の逆止弁を押し上げて排出されます。
次にピストンが後ろに下がると、今度は上部の逆止弁が閉じると同時に下部が開き、液がシリンダー内に吸い込まれます。
しかもこのとき上部からの液の逆流がありません。(図6)
このように逆止弁は液を一方向のみに移動させる働きがあり、ダイヤフラムポンプ(往復動ポンプ)の命とも言うべき重要な役割を担っています。
逆止弁としては、一般に球状のチャッキボールと呼ばれるものが使用されています。 

 

ダイヤフラムポンプのポンプヘッドの構造図

 

以上がダイヤフラムポンプの吸引・吐出の原理です。

ダイヤフラムポンプの特性

上記の原理から、ダイヤフラムポンプには次のような特性が表れます。

脈動になる仕組み
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(1)液の流れが脈動になる

動作原理によれば、液の吸引と吐出が交互に行なわれることによって、液が間欠的に流れることになります。これを脈動といいます。これこそ渦巻ポンプと根本的に異なる特性です。(後で詳しく述べます)

(2)逆止弁の働きによって、一旦シリンダー内部に入った液は、必ず上部から排出される。

したがって、たとえ吐出側(上部)にどんなに大きな圧力がかかりチャッキボールを押さえつけていようとも、動力(ピストンを押す力)が許す限り、シリンダー内部の圧力が増大します。
これは理論的にいえば、閉塞運転の場合にはシリンダー内部の圧力が無限大にまで上昇する可能性があることを意味します。
しかし圧力が無限大になる前に、ポンプ付近で強度の最も小さいところ、たとえばシリンダーや吐出側配管などが破裂したり、ピストンを押そうとする電動機が焼損したりします。
ダイヤフラムポンプを使用する際に、リリーフ弁(安全弁)や電動機用のサーマルリレーを絶対に忘れてはならないのは、この理由からです。

(3)逆止弁のシール性が非常に重要

ゴミなどが逆止弁付近に混入するとシール性が悪く(逆止が効かない状態に)なり、ポンプ性能が著しく悪化します。場合によっては全く吐出しなくなります。また逆止弁や弁座(逆止弁が密着する部分)にキズがついても同じ状況になります。
さらに逆止弁と弁座が乾燥状態であれば、空気が微少な凹凸の間を通過するために結果としてシール性が悪くなることがあります。(ポンプがタンクの上にある場合……吸い込み条件)
この場合は逆止弁と弁座を液で濡らすとシール性が良くなり、吸引・吐出が可能となります。

 

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