基礎講座|精密ポンプ技術 3-3. オーバーフィード現象の解決策2 背圧を大きくする

背圧を大きくする

当社の小型ポンプに付属されているサイホン止めチャッキ弁の設定圧力は0.1~0.2MPaですが、この値は一定であり現場で変更することはできません。そこで前述のような、圧力調整のできる背圧弁が必要になります。

(式1)で慣性抵抗による圧力を計算し、それ以上の値に背圧弁の圧力を設定すれば、オーバーフィード現象を防止することができます。

(式1) P i = 2 × 10-6 × ( D / d )2 × ( N / 60 )2 × S × L × γ  

 

意味の説明 単位
 P i 液体の慣性力による圧力  MPa
 2 × 10-6 換算計数  なし
( D / d )2 (プランジャ径/ホースの内径)の2乗 (cm/cm)2
( N / 60)2 (1分間当りのストローク数/60)の2乗 (spm/60)2
 S ストローク長さ  cm
 L ホース長さ  cm
 γ 液体の密度

 g/cm3


たとえば、計算による慣性抵抗の値が0.3MPaであれば、背圧弁を0.3MPa (余裕を見て0.35MPa) 以上に設定すれば、オーバーフィード現象は起こらないことになります。
しかし、いくら背圧を調整できるといっても0.5MPaも0.6MPaも昇圧させるのは無謀です。原則として、慣性抵抗の計算値と背圧弁の設定値を加算した値が、ポンプの最高許容圧力(カタログ値)の80%以下になるようにしてください。  

ポンプの最高許容圧 × 0.8 ≧ 慣性抵抗 + 背圧弁の設定圧力

※ 背圧弁は、できるだけ注入点の近くに設置してください。
※ 背圧弁(サイホン止めチャッキ弁)は、スラリー含有液には
  使用できません。

たとえば、最高許容圧力が0.5MPaのポンプでは、慣性抵抗値と背圧弁の設定圧力との合計が0.4MPa以下となるように設計する必要があります。
(実際には背圧弁が開いたとき、設定圧力が全てポンプにかかるわけではありませんが、バルブを液体が通過する際の圧力損失が新たに発生するため、余裕をみて設定圧力全部が加算されるものとして計算します)

 

タクミナの「スムーズフローポンプ」は、ダイヤフラムポンプでありながら脈動がないため慣性抵抗の影響をほとんど受けません。オーバーフィード現象自体を回避することができます。
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