基礎講座|滅菌・殺菌 11-1. トラブルシューティング (1)注入がうまくいかない

塩素殺菌のトラブルシューティング

塩素殺菌のトラブルの局面は、大きく分けて以下の3つになります。

(1)注入がうまくいかない
(2)計測、制御がうまくいかない
(3)殺菌ができていない

それぞれの局面について原因と対策を考えていきましょう。
※なお、殺菌システムに使われている機器類は、正しく設定・運転・保守されていることを前提としています。

(1)注入がうまくいかない

注入のトラブルで最も多いのは、やはりダイヤフラムポンプ周辺です。しかし、ダイヤフラムポンプだけを点検しても解決しないことも多く、薬液タンクから注入点までを点検するのが良いでしょう。

ダイヤフラムポンプ自体では、機械的故障や消耗部品の損傷を除けば「ガスロック」が一番の問題です。
ガスロックとは、ポンプ室内に気体を吸い込んだ場合、ダイヤフラムが前進して押し出そうとしてもポンプ室内の圧力が気体の影響で吐出側の圧力にうち勝つまでに上がらないため、「ポンプ室内の気体を押しているだけ」になり、注入できない状態です。回転ポンプで言う「空運転」とは状況が異なります。
※ガスロックの詳細については、注目テーマ「ガスロックとは」をご覧ください。

ガスロック現象

 

●液を吐出しない

問題 原因 対策
ポンプは正常に
運転しているが
液が吐出しない
(液が上がって
こない)
(1)液の粘度が高い
(2)ホース、バルブの詰まり
(3)ホース口径が小さい、もしくは配管が
  長い
(4)ストローク長が短い
(5)弁座のゴミ詰まり、または変形
(6)薬液タンクの残量が少ない
(7)フート弁、ストレーナの目詰まり
(8)ガスロック
(9)弁座部の組込方向違い
(1)液の粘度を下げる
(2)ホース、バルブを洗浄する
(3)ホース口径を太くする、配管長を短くする
(4)ストローク長を長くする
(5) 弁座を洗浄する、または交換する
  短期間で弁座が変形する場合は、材質を
  変更する
(6)液を補充する
(7)フート弁、ストレーナ、タンクを洗浄する
(8)エア抜きを行う
(9)弁座部を分解して組みかえる
エアが入る (1)液の性質によるガスの発生
(2)継手、シール部などの緩み
(3)薬液タンクが空
(1)液を希釈する
(2)継手、シール部などを増し締めする
(3)薬液を補給した後、エア抜きを行う

●吐出量が少ない

問題 原因 対策

ポンプは正常に
運転しているが
吐出量が少ない

(1)ポンプヘッドにエアが混入
(2)ダイヤフラムの劣化、破損
(3)弁座部の劣化、詰まり
(4)配管の詰まり
(5)吸い込み高さが仕様範囲外
(6)液の粘度が高い
(7)吐出圧力が高い
(8)ストローク長が短い
(9)吸込側ホース・バルブの詰まり
(10)フート弁、ストレーナの目詰まり

(1)エア抜きをする
(2)ダイヤフラムを交換する
(3)弁座を洗浄する、または交換する
(4)配管内を洗浄する
(5)吸い込み高さを仕様範囲内にする
(6) 液の粘度を下げる、または
  高粘度継手に変更する
(7)圧力、仕様を確認をする
(8)ストローク長を長くする
(9) 吸込側ホース・バルブを洗浄
  または交換する
(10) フート弁、ストレーナ、薬液タンクを
  洗浄する

●吐出量が多い

問題 原因 対策
ポンプは正常に
運転しているが
吐出量が多い
(1)オーバーフィード現象の発生
(2)吐出側で負圧が発生
(3)押込圧力が高い
(1)(2) サイホン止めチャッキ弁が付いて
  いればサイホン止めチャッキ弁を洗浄、
  付いていなければサイホン止めチャッキ弁
  を設置する
(3)押込圧力よりも吐出側圧力を高くする

●液がもれる

問題 原因 対策
継手部から漏れる (1)ホース、ナットの締め付け不足
(2) ごみ詰まりなどにより吐出側配管が閉塞
  し圧力が増加
(3)ホース接続部の劣化
(1)ホース、ナットを増し締めをする
(2)配管内を洗浄する
(3)ホースを交換する
ポンプヘッド部
から漏れる
(1)ヘッドボルトの締め付け不足
(2) ごみ詰まりなどにより吐出側配管が閉塞
  し圧力が増加
(3)ダイヤフラムの疲労による破損
(1)ヘッドボルトを増し締めをする
(2)配管内を洗浄する
(3)ダイヤフラムを交換する

 
次回、計測・制御のトラブルシューティングについて説明していきます。