基礎講座|滅菌・殺菌 14-2. オゾンによる殺菌効果
オゾン(O3)は波長の短い紫外線が酸素(O2)に当たることによって生成されます。オゾンそれ自体は非常に不安定で、分解して非常に反応性の大きい発生期の酸素(O)を放出します。そのためオゾンと接触した物質は直ちに酸化されます。このことは、人間を初めとする生物にとっては猛毒で、微量であっても生体に重大な影響をもたらすことを意味します。ちなみに夏の日中に発生する光化学スモッグの主成分はオゾンです。
一方、上空20~25kmに広がるオゾン層が有害な紫外線をカットしてくれているため、地球上、特に地上の生命が保たれているのです。今、そのオゾン層がフロン等のために破壊されつつあるということはご承知の通りです。このオゾンが浄水場の消毒工程で使用されるようになって100年ほど経ちますが、最近の水質の悪化に伴う高度処理の必要性の増大により、益々多く使用されるようになってきました。
水中において、オゾンは酸性溶液の場合は比較的安定ですが、温度が上昇したり、pHが高くなると急速に分解します。
その際、加水分解によってヒドロキシラジカル(・OH)やヒドロペルオキシラジカル(HO2)または過酸化水素(H2O2)が生じます。特に、ヒドロキシラジカルはオゾン分子よりも酸化力が強く、細菌やウイルスの不活性化に大きく寄与しているといわれています。
- ※ ラジカルとは「過激な」という意味ですが、ここでは「非常に反応性に富んだ物質の状態」とお考えください。
オゾンの殺菌機構
オゾンが分解すると酸素と発生期の酸素を生成しますが、このうちの酸化力の強い発生期の酸素が、細菌の細胞壁や細胞膜に作用することにより機能を変化させ、最終的に菌を溶かしてしまうものと考えられています。水中では、前述のようなヒドロキシラジカルが存在するため、このプロセスを促進します。
またウイルスについてはオゾンによって直接RNAやDNAが破壊され、活性を失うことが確認されています。
オゾンを使用する場合のメリットとデメリット
メリット
- 比較的低濃度で短時間で殺菌処理ができる。
- トリハロメタン等の有機塩素化合物を作らない。
- 残留性を嫌う分野で有効。
- 除鉄、除マンガンが容易。
- 臭気の除去ができる。
デメリット
- 残留性を必要とする分野(例えば水道)では単独で使用できない。
- 比較的低濃度でも毒性が強い。
- アルデヒドや臭素酸イオンなどを生成することがある。
これらは発ガン性の疑いが指摘されています。 - 腐食性が強く、特にゴム・プラスチックを侵す。