基礎講座|滅菌・殺菌 5. 次亜塩素酸ナトリウムの留意点

濃度

一般には有効塩素量6%、12%の濃度のものが流通しています。
次亜塩素酸ナトリウムは分解しやすい薬剤ですが、濃度の面では3~6%の時にかなり安定しています。次亜塩素酸ナトリウムの選択は安定性、使用量、貯蔵期間、配送上の都合、希釈の有無などを考慮して選択する必要があります。

含有塩分と残アルカリ

次亜塩素酸ナトリウムは水酸化ナトリウムに塩素を反応させて作ります。

2NaOH + Cl2 → NaClO + H2O + NaCl

このように、溶液中に次亜塩素酸ナトリウムと同mol量の食塩を含むことになります。また、未反応の水酸化ナトリウムも次亜塩素酸ナトリウム溶液中にわずかに残ります。
一般の12%次亜塩素酸ナトリウムでは、食塩を11%、残アルカリを0.5~1.2%含有していますが、低食塩次亜塩素酸ナトリウムでは食塩4%以下、残アルカリ0.3%が一般的です。一般の次亜塩素酸ナトリウムは、食塩以外の含有物も多い傾向にあり、それだけ分解しやすいため、多少高価ですが低食塩次亜塩素酸ナトリウムの使用をお奨めします。

なお、前塩素処理やアンモニア処理などで大量に次亜塩素酸ナトリウムを注入すると、水中の硬度成分が残アルカリ成分と反応して水酸化スラリーとなって、処理水が白濁することがあります。この意味でも残アルカリの少ない低食塩次亜塩素酸ナトリウムが有効です。

また、食塩が多く含まれている一般の次亜塩素酸ナトリウムでは、冬季の温度低下によって溶解度も低下して結晶が析出することがあります。この結晶が定量ポンプその他の部分のシール性能を低下させ注入不良などのトラブルにつながることがありますので、この点についても注意が必要です。

次亜塩素酸ナトリウムの分解を抑える

次亜塩素酸ナトリウムは前述のように分解しやすい薬剤ですので、できるだけ分解を抑える必要があります。
分解が進むと有効な殺菌ができないだけでなく、各所でトラブルを引き起こしますので次のような対策をお奨めします。

 ・貯蔵期間を短くする。
 ・紫外線、温度によっても分解が進むので、高温になる場所や直射日光を避ける。
 ・次亜塩素酸ナトリウム自体に含まれる含有成分(不純物)が少ない品種・銘柄を選定する。
 ・金属と接触するとそれが触媒の働きをして分解を促進させるので、タンクだけでなく配管や配管用の部品にいたるまで金
  属部品を避ける。
 ※金属ナットがインサー卜された部品、内部に金属を使用したバルブなどは特に注意が必要です。
 ※チタン、ハステロイCなどは使用できますが、この場合も電池効果を避けるため異種の金属は使わない。(1種類のみに
   統一する)

 ・希釈水に含有している不純物(鉄・マンガン・硬度成分)との反応でできたスラリーも触媒の働きをするので、希釈水には
  純水、軟水器で処理した水を使用する。
 ・貯蔵タンクに異物(ゴミや工事用の部品)を混入・落下させない。


次亜塩素酸ナトリウムの分解が原因となって発生する卜ラブルの代表はダイヤフラムポンプのガスロックです。薬剤中で発生したごく細かい気泡は液中に残ったままポンプ内に吸入され、ポンプ室内で大きな気泡となってポンプの吐出を妨害します。
※ガスロックの詳細については、注目テーマ「ガスロックとは」をご覧ください。

[備考]
ポンプや配管を点検してもガスロックが解消しない場合は、タンクを洗浄し沈殿物を除去した上で、次亜塩素酸ナトリウムの銘柄を変更すると解消することが多いようです。