基礎講座|精密ポンプ技術 4-1. エアチャンバーの原理

エアチャンバーとは

ポンプの脈動を減少させるために一般的に使われている機器。
容器内の空気の伸縮を利用して往復動ポンプの脈動を抑え、安定した液体の流れを作ります。
配管の振動やオーバーフィード現象など脈動にまつわる諸問題を軽減できます。

エアチャンバー使用時の吐出波形

図1は、ダイヤフラムポンプの吐出波形を表しています。
Aの部分では、液体を吐出しています。
Bの部分では液体を吸い込んでいます(ポンプヘッド内に液体が吸い込まれており、液体は吐出されていない状態)。
エアチャンバーは、空気の伸縮を利用し、図1の波形を図3のように均一にします。
図3では、脈動がなくなり連続一定流であることが分かります。

 

 

脈動が減少するメカニズム

ポンプが吐出行程の際、ポンプの吐出する圧力によりエアチャンバー内の空気が圧縮され、エアチャンバー内に液体が増えます。
ポンプが吸込行程の際(液体がポンプから吐出されない間)は、ポンプからの吐出圧力はかからないためエアチャンバー内で圧縮された 空気の圧力によってエアチャンバー内の液体を押し出します。
つまり、ポンプが吐出行程にあるときは、ポンプから吐出された液体の一部がエアチャンバーに流れ、ポンプが吸込行程にあるときは、エアチャンバー内の液体が配管に流れます。
このメカニズムで、脈動が減少します。

アキュームレータとは

 

アキュームレータは、空気が直接液体に触れないように、エアチャンバー内にゴムの隔膜が設けられているとイメージしてください。実際には、プラダと呼ばれるゴムの風船のようなものが入っており、一定の圧力まで圧縮されたガス(一般に窒素ガス)が封入されています。なお、脈動低減原理はエアチャンバーと同じです。 アキュームレータを使用すると、空気と液体が直接接触しないので、空気が液体に溶解したり、液体が酸化・劣化したりすることはありません。

エアチャンバーのデメリット

  • エアチャンバー内の空気が液体に溶解して少なくなると脈動が大きくなるため、定期的にエアを補充する必要がある。
  • 空気によって影響を受ける液体には使用できない。
  • ポンプの吐出量を変える度に絞り弁を再調整する必要がある。
  • エアチャンバー内部のエアが充分に蓄圧されるのに時間がかかるため、液が吐出するまでに時間がかかる。(ポンプ起動時の吐出遅れ)
  • ポンプ停止時、エアチャンバー内に蓄圧されたエアが液を押し出すため、エアチャンバー内のエア圧力が下がりきるまで液が出続ける。(ポンプ停止時の液ダレ)

設置上の注意

  • ポンプ近くにリリーフ弁を必ず設置する。
  • 配管に締め切り弁が設けられている場合は、締め切り弁を全開にした後でポンプのスイッチを入れる。
  • 最高使用圧力を超えないようにする。
  • 寒冷地では地面に配管を這わせないようにする。屋外など、凍結する可能性が大きい場合は、配管、ポンプ、エアチャンバーを保温する。
  • 異常な温度上昇(金属製の場合)や紫外線の影響(PVC製の場合)を避けるため、直射日光下で使用しない。

エアチャンバーのリスク

リスク 1

エアチャンバー内のエアは、時間が経つと移送液に溶け込んで徐々に減少します。そのまま放置し続け、エアチャンバー内のエアが無くなると、エアチャンバーは配管の一部となってしまい、脈動が発生します。脈動により配管が振動し、配管に緩みや破損が生じて液漏れするおそれがあります。

リスク 2

エアチャンバーの材質が、圧縮されたエアの圧力に耐えられなくなったときに、エアチャンバーが破損・破裂して、液体の飛散やエアチャンバーの破片の飛散などで人が傷害を負うおそれもあります。


エアチャンバーが不要な往復動ポンプ スムーズフローポンプ

タクミナのダイヤフラムポンプ「スムーズフローポンプ」は、 下図のような高精密等速度カム機構を採用し、左右両ポンプヘッドの吐出量の和を一定にすることで、連続一定流を実現しました。

 

スムーズフローポンプのメリット

  1. エアチャンバーが不要なので、エアの減少に伴う配管振動や、万一のエアチャンバー破損による薬液飛散などのリスクを未然に回避。
  2. エアチャンバーのエア補給や絞り弁の調整などの、日常的なメンテナンスが不要!

     

     
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  4. 脈動がないため、太い配管や振動対策が不要!

     

     
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