基礎講座|精密ポンプ技術 7-1. 圧縮比について

容積式の原理から考えると、空気(ガス)のポンプヘッド内部への混入が重大な影響を及ぼすことが推測できます。以下、空気がダイヤフラムポンプに与える影響を見ていくことにしましょう。

圧縮比について

もう一度、注射器を想像してください。

 

 

注射器に液を吸い込んだとき、(図1)の(2)のように空気が混入すると、ダイヤフラムを押し切ったとして(3)’のように空気が残るだけでなく、一体何mL注入できたのか判りません。そこで(3)のように注射器を上向きにして、空気を完全に取り除いて初めて、正確な注入量が確保される訳です。

また(3)’のようにダイヤフラムを押し切っても空気が残る部分をデッドスペースと呼びます。一般にポンプの圧縮比が良いというのは、ダイヤフラムの移動容積に対して、このデッドスペースが非常に小さいことを指します。
ここで、ポンプヘッド内部の総容積をV、ダイヤフラムの実際移動容積をV’とすると

圧縮比 = V / ( V - V’ )

で表わされます。図示すると次の(図2)のようになります。

 

 

たとえば、ポンプヘッドの総容積を100mL、ダイヤフラムの移動容積を90mLとすると、圧縮比は

圧縮比 = 100 / (100 - 90 ) = 10

になり、10倍に圧縮されることを示します。またそのときのデッドスペースは、100 - 90 = 10mLとなります。

ダイヤフラムポンプの圧縮比

ダイヤフラムポンプの圧縮比の考え方も注射器の場合と同じです。(図3)

では、注射器とダイヤフラムポンプとの違いは何でしょうか?

ダイヤフラムポンプには液の吸込口、吐出口の二カ所の開口部があり、その分デッドスペースが大きくなります。しかもダイヤフラムがポンプヘッドの前壁に衝突しない構造になっているため、更にデッドスペースが広がります。このために、注射器と比較してダイヤフラムポンプの圧縮比は悪くなります。

ダイヤフラムが前方に移動しきったとき、前壁にちょうど当たるように設計することは可能ですが、部品の寸法公差によっては前壁に移動途中で衝突していまい、駆動部のベアリングが破損したり、モーターが焼損することがあります。したがってダイヤフラムの最前位置(上死点)とポンプヘッドの前壁との間に若干の余裕を取っています。

ただし、この余裕分は、ポンプが大容量になったからといって、比例させて大きくとる必要はありません。これはポンプが大容量になるほど圧縮比を大きくすることができるため、ガスロックが起こりにくくなることを意味します。逆にいえば、小容量のポンプほどガスロックが起こりやすくなります。

 

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