基礎講座|精密ポンプ技術 6-3. キャビテーションを起こさないためには

キャビテーションを起こさないためには

要するに、キャビテーションの発生を助長する要因の全く逆を考えればよいのです。つまり、

  • a)
    吸込側配管を短くする。
  • b)
    配管内径を太くする。
  • c)
    ストロークのスピードを遅くする。
  • d)
    ポンプの吸込条件を改善する→できるだけ押し込み条件にする。

といったことが考えられます。慣性抵抗のところで述べたように(3-2. オーバーフィード現象の解決策1 慣性抵抗を小さくする)、b)の配管内径を太くするのが最も実用的かつ効果的です。慣性抵抗の値が、配管口径の2乗に反比例するからです。

ここで、d)のポンプの吸込条件を改善する、ということに注目してください。キャビテーションは、ポンプ内部あるいは吸込側配管内部の圧力が低下することによって発生するものでした。ということは、圧力の低下分以上の圧力が吸込側にかかっていれば、キャビテーションは発生しないことになります。たとえばポンプ内部で-0.02MPa分だけ圧力が低下するとすれば、吸込側に0.02MPa以上の圧力をかければ良いということです。実用的には、タンクを密閉構造にして窒素ガスなどで加圧する方法がとられています。

ただし、この方法は、タンクを密閉構造にするのにコストがかかること、また加圧し過ぎるとタンクが破裂する恐れがあることなど、いくつかの問題があります。設計に当たっては充分な配慮が必要です。

押し込み条件とは

そこで、タンクを密閉構造にしないでポンプの吸込側を加圧する方法を考えてみましょう。

(図1)のようにポンプを設置すると、タンクの液面からポンプまでの液の重さ(圧力)がポンプの吸込側にかかり、慣性抵抗などによる圧力の低下分を補填します。これを押し込み条件といいます。
たとえば水の場合は、水位1m当たりで0.01MPaの圧力(水頭・ヘッド)が得られます。

押し込み条件にする際の注意事項

(図2)のように押し込み条件にする場合は、配管が長くなり過ぎない程度にしてください。
配管が長くなるということは、配管抵抗が増大することを意味するからです。
(この場合も配管径を太くする方法をとることができますが、コストアップになるばかりでなく、メンテナンスも大変になります)

揮発性液体の定量移送には3連式スムーズフローポンプが望ましい

吐出側配管中にエアチャンバーを設けると、慣性抵抗が低減できることは既に述べました。もちろん吸込側にエアチャンバーを設けることも理論的には可能ですし、実例もあります(図3)。
しかし、配管が複雑になるばかりでなく、空気の補充が難しい(空気量が多すぎるとエアチャンバー内の空気がポンプの内部に入ってくる)などのメンテナンス上の問題があります。

この意味で、吸込側のエアチャンバーの設置は、メンテナンス担当者が常駐している場合を除いて、あまり実用的とはいえません。

3連式スムーズフローポンプは、吸込側に脈動が発生する2連式スムーズフローポンプに対して、吐出側、吸込側共に無脈動になります。(ただし吐出側の脈動率は、理論的には2連式スムーズフローポンプの方が優れています)3連式を使用すると、脈動がなくなることによって慣性抵抗もなくなり、キャビテーションが非常に起こりにくくなります。(図4)
無脈動、つまり連続流になると慣性抵抗はなくなりますが、液体と配管の内壁との間で生じる摩擦抵抗は残ります。 


3連式スムーズフローポンプは、揮発性液体の定量移送以外にも以下のような条件に適しています。
  • (1)
    高粘度液体の無脈動定量移送。
  • (2)
    沈降性スラリー(粒子状物質を含む液体)の移送。脈動のあるポンプを使用すると、ポンプが吸込行程にあるとき、つまり吐出していないときにスラリーが沈降してしまい、場合によってはポンプヘッド内部には液だけしか入ってこないことになりかねません。ところが3連式スムーズフローポンプの場合は、配管中を液が連続して流れていますので、スラリーが沈降する余地がなくなり、安定した移送が可能となります。
  • ただし、スラリーの沈降速度よりも配管内の流速の方が大きいことが絶対条件です。この意味からも、吸込側が無脈動であるために配管径を細くして流速をあげることのできる3連方式が望ましいといえます。
  • ダイヤフラムポンプとして移送可能なスラリーの粒子径は、スラリー性状にもよりますが、概ね100μm、濃度は重量濃度として10%程度と考えてください。(弊社ではスラリー性状に合わせカスタマイズが可能です。お問い合わせください。)

重量濃度:スラリーの重量 / (スラリーの重量 + 液体の重量) × 100