基礎講座|精密ポンプ技術 9-3. 摩擦抵抗の計算

一般に管内の摩擦抵抗による圧力損失は次式(ダルシーの式)で求めることができます。

△P:管内の摩擦抵抗による圧力損失(MPa)
hf:管内の摩擦抵抗による損失ヘッド(m)
ρ:液体の比重量(ロー)(kg/m3
λ:管摩擦係数(ラムダ)(無次元)
L:配管長さ(m)
d:配管内径(m)
v:管内流速(m/s)
g:重力加速度(9.8m/s2

ここで管内流速vはポンプ1連当たりの平均流量をQa1(L/min)とすると次のようになります。
最大瞬間流量としてQa1にΠ(パイ:3.14)を乗じますが、これは往復動ポンプ脈動によって、瞬間的に大きな流れが生じるからです。

次に層流域(Re≦2000)では

となります。

Qa1:ポンプ1連当たりの平均流量(L/min)
ν:動粘度(ニュー)(m2/s)
μ:粘度(ミュー)(ミリパスカル秒 mPa・s) mPa・s = 0.001Pa・s

以上の式をまとめポンプ1連当たり層流域では圧力損失△P(MPa)を粘度ν(mPa・s)、配管長さL(m)、平均流量Qa1(L/min)、配管内径d(m)でまとめると次式になります。

この式にそれぞれの値を代入すると摩擦抵抗による圧力損失を求めることができます。

計算手順

式(1)~(6)を用いて圧力損失を求めるには、下の«計算手順»に従って計算を進めていくと良いでしょう。

  • «手順1»
    ポンプを(仮)選定する。
  • «手順2»
    計算に必要な項目を整理する。(液の性質、配管条件など)
  • «手順3»
    管内流速を求める。
  • «手順4»
    動粘度を求める。
  • «手順5»
    レイノルズ数を求める。
  • «手順6»
    レイノルズ数が2000以下であることを確かめる。
  • «手順7»
    管摩擦係数λを求める。
  • «手順8»
    hf(管内の摩擦抵抗による損失ヘッド)を求める。
  • «手順9»
    △P(管内の摩擦抵抗による圧力損失)を求める。
  • «手順10»
    計算結果を検討する。

計算結果を検討するにあたっては、次の条件を判断基準としてください。

  • (1)
    吐出側配管
    △Pの値が使用ポンプの最高許容圧力を超えないこと。
    安全を見て、最高許容圧力の80%を基準とするのが良いでしょう。
  • (2)
    吸込側配管
    △Pの値が0.05MPaを超えないこと。
    これは圧力損失が0.098MPa以上になると絶対真空となり、もはや液(水)を吸引できなくなること、そしてポンプの継手やポンプヘッド内部での圧力損失も考慮しているからです。

圧力損失が大きすぎて使用不適当という結果が出た場合は、まず最初に配管径を太くして計算しなおしてください。高粘度液の摩擦抵抗による圧力損失は、配管径の4乗に反比例しますので、この効果は顕著に現れます。
たとえば配管径を2倍にすると、圧力損失は1/24、つまり16分の1になります。